杉で作ったエレキギターって聞いたことありますか?
基本的にエレキギターに使われるのは広葉樹が多く、また海外で普及している木材で作られることが殆どです。そのため、針葉樹であり、日本の固有種でもある杉の木材は、今までギターに使われることはありませんでした。
しかし、近年杉材の需要低下や技術の発展によって、杉材をエレキギターに使用するという取り組みがなされるようになりました。今日はそういった取り組みをいくつかご紹介します。
京都大学大学院農学研究科による杉のエレキギター
京都大学大学院では、国産材の音響特性の研究が行われており、その研究の一端で杉のギターを開発したようです。
狂いの多い杉材を安定させるために、8年の自然乾燥に加えて低音乾燥を行ったとのこと。
私は業界の人間ではないのでそこまで詳しくはないですが、それくらいで杉材が安定するのであれば、十分楽器用材として利用できるのではないかなと感じました。
肝心の音に関しては、「楽器に向いているといえるほど特徴的な傾向は出なかった」とのこと。ものすごく微妙なコメントですが、要するに強いクセは無くて汎用性のある材という風にも取れますね。そうなると供給が簡単な他の木材に軍配が上がってしまいそうですね。
ただ、この記事では木目の美しさにも着目しています。杉の木目は結構派手なものも多いですから、木目を強調すると商品価値が見えてくるのかもしれません。
この研究が杉ギター生産の一助になってくれるとよいですね。
新興ギターメーカー「Singular」の杉ギター
金沢に工房を構えるSingularというブランドが、圧縮杉を使ったギターを制作しています。
今のところHPにはベースしかラインナップがありませんが、Instagramを見てみるとギターも一応あるみたいです。購入はできるのかな?
今のところ杉で作ったギターを販売しているのはここくらいだと思います。
杉を圧縮するというのはまさしく現代的なアイデアだとですね。ネック材にはそれなりの強度が求められますし、杉を圧縮することでそれに見合う強度を手に入れるというのは合理的だと思います。見た目も特徴的ですし、これはもっと有名になっていいブランドです。
ただ、HPやSNSの更新が最近行われていないようなのが気になりますね‥‥
私が作った杉ギター
とんでもない手前味噌ですが、私が以前作った杉ギターです。ボディに実家で見つけた杉の古材を使用しています。木目がすごいですよね、自画自賛ですけども。
この板自体は私の曽祖父が切ったものだそうで、60年ほど物置に放置されていました。
MLシェイプに、ボディ厚は50㎜ほどと、普通のギターよりも大分体積のあるギターを作つたのですが、使ってた感じは全く重くありませんでした。むしろ軽い。
針葉樹である杉の木は成長が早いため、木の密度が高くありません。それが狂いやすさや乾燥のしにくさにつながっているようなのですが、密度が低いということはその分軽いのです。そのため、存在感がありながらも扱いやすいギターになりました。
音としては中音域にピークがある、特徴的な音に仕上がったと思います。ピックアップも中音域にピークがあったので、それがそのまま杉の特性とは言えませんが、使いやすい音になりました。特に歪ませたときの抜けの良さが個人的にうれしいポイントでした。
このギターができるまでの過程を動画にまとめて、ニコニコ動画に上げています。ド素人の工作動画ですがよろしければ見てください。
まとめ
国産材を使ったギター作りが近年勢いをつけてきている気がします。日本の技術力の高さが世界のギター業界でも認知されるようになった今、「Made in Japan」のさらなる箔付けとして国産材利用という方法が模索されているのでしょう。
ただ、杉という木は他の木材と比べて狂いや割れが生じやすい傾向にあるようで、ギター用材として使うには工夫が必要です。
現状Singularギター以外は商業ベースではないワンオフ品です。またSingularギターに関しても販売体制が十分に整っているとはいいがたい状態に見えます。
今杉ギターに課題があるとすれば、加工に手間がかかることと、そこまでして生産しても、杉のギターを欲しがる人がいないという点ではないでしょうか。
豊富な資本を持ったブランドがしっかりした生産体制を作り、さらに杉ギターの独自性をアピールして「買いたい!」と思うようなギターにする。そういった取り組みが必要だと思います。
こうしてみると杉ギターの普及は難しいように思われますが、まだまだ研究は始まったばかりです、今もニュースにはなっていないだけで、大手のギターブランドが杉のギターを開発しているかもしれません。数年後には店頭で杉ギターを見かける日が来るかもしれませんね。
では、今日はこの辺で
サヨナラッ!